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-第1回- 坂藤加菜 movingscape radio書き起こし

更新日:2019年11月6日

第1回ブログは「movingscape radio -坂藤加菜-」のまとめ記事です。ラジオには残らない写真や図版も交えてお届けします。


◯自己紹介


野口 第一回のゲストは坂藤加菜さんです。

ダンス、役者、パフォーマンスイベント企画、など多彩な活動を展開しているとこのことですが、自己紹介をおねがいしてもよいですか?


坂藤 出身地は東京の府中です。


野口 ああ、そうだ多摩川と一緒に育った人だったね。


坂藤 たっぺいくんもあの辺でしょ?


野口 おれは東村山市だから、どっちかというともっと武蔵美のほう。トトロの森があるよ。


坂藤 ととろ?


野口 隣町が所沢なんだけど、宮崎駿の姪っ子が所沢のことを「ととろざわ」って言ったことからイメージが膨らんで「となりのトトロ」の物語がうまれたって話をきいたことある。所沢と東村山をまたぐように八国山っていうのがあるけれど、映画にも七国山病院ってでてくるよ。お母さんが入院してるところ。


坂藤 へえ~、なるほどね。

なんか東京生まれ東京育ちの友達ってあんまりいないよね。しかも府中と東村山、どっちも市の人だ。


野口 あはは、たしかに。

そういえば、坂藤さんが学生時代につくっていたラジオをユーチューブでみたよ。


坂藤 そう、やってたんですよ、ラジオ。

なんでやってたのかっていう動機とかはまったく覚えてないんだけど。

でも私よく友達と話している時に録音してて、録音あそびというか。そういう時に気まぐれで「今からラジオです!」って感じで録ったやつを編集して公開したりしてた。笑


野口 たしかに。女の子たちの普段のじゃれ合い、異文化!って感じがした。

録音あそびなんてあるのか~、おれはぜんぜんやってこなかった。


坂藤 そうなんだ、やってそうなイメージがあるけれど。写真とか文章なのかな?


野口 なんでユーチューブに投稿してたの?


坂藤 ああ、その時はユーチューブしか発信の手段をしらなかったの。笑


野口 へえ。笑 

でもいいよね、普段使いのもので自然にあそぶこと。制作でもそうなのかな。

そういえば、この前ウェブサイトのこと話したときも「なんでこういう形式で作品をまとめてるの?」ってきいたら「タンブラーしか知らないから」って。


坂藤 そう、それしか使えないからね。


野口 なんかいいな~、なんだろう。



◯パンダの話


坂藤所持のシャンシャンのぬいぐるみ。生後2日後の体重(147g)と同じ重さ。


野口 うわ~、やばいね。

それパンダなんだよね?


坂藤 そう。シャンシャンのうまれた時の重さと大きさなのだ。


鈴木 パンダのぬいぐるみね。200グラムくらいだったかな。


野口 昔図鑑でみたことある。

うまれてきたらお母さんがぺろぺろ舐めてあげるんだっけ?


坂藤 これは皮膚の赤さだけど、シャンシャンは毛が結構赤かったんだよね、それはお母さんの舐めた唾液の成分が赤くなるからだったみたい。


野口 へえ。それにしてもちっちゃいな~


鈴木 ハンターハンターでそういうちっちゃい赤ちゃんいたな、、うわ、ちっちゃ。みたいな。


野口 ああ、アリンコのね。


坂藤 ハンターハンターって人間の話じゃないの?


鈴木 キメラアントっていう敵がいて、食べた生き物の遺伝子を取り込んで、子供に遺伝させることができるの。強い蟻。


坂藤 へえ~


野口 そういえばパンダって双子が生まれたら片方育てなくなっちゃうことがあるって聞いたことある。育児放棄。


坂藤 えー、そうなんだ。そういえば和歌山の動物園で双子生まれてたよね。


鈴木 まあでも実際人間が育てられるでしょ。


坂藤 そうかもね。


野口 シャンシャンってライブカメラで育つ様子をみれるんでしょ?


坂藤 そう、育つ様子というか、常にカメラがパンダの部屋を映している感じ。いつも職場でみてるよ。カメラが7つくらいあって、チャンネルを選べるんだよね。だから飼育員さんが掃除しているだけの画面とかもあるよ。


野口 おもしろい?


坂藤 それだけじっくり見てる感じではないんだけど、それこそ、ラジオみたいに、作業中に画面の片隅にいる。みたいな。


野口 へえ。


坂藤 景色みたいな。

自分がみてなくても、職場のほかの人がみてて、いま可愛くておもしろいよ、って教えてもらうこともある。


野口 職場全体でシャンシャンを見守ってるのか。

パンダって珍しいからみたくなるのかな?


坂藤 動物園だと並ばなきゃみれないみたいな存在だよね。



◯movingscape


野口 「movingscape1 乱立する筒」の作品を一緒に作っているわけだけど、この1ヶ月やってみてどうですか?


坂藤 昨日荻窪でやったのが、はじめて動いた感じがしたね。奥西さんが描いてる姿とか初めて見たし。ああいうのやりたかったなって思った。


野口 movingscapeは、チラシには「静止なき多視点多中心的な」って書き方をしているんだよね。


坂藤 うん。


野口 この感覚は、おれが台湾でタイヤひっぱりの旅をしている時に気付いたもので。

毎日毎日景色が移り変わっていって、自分自身も動いていて、自分が動くことによって影響を受ける景色もあり、そういうのが繰り返されていくなかで自分がみている景色の中に自分も含まれているような意識が深まっていった。


坂藤 うん。


野口 例えば、断崖絶壁で超高い壁が右にそびえていて、左側の下をみれば荒波打ち付ける海!みたいな時に夜になっちゃって、真っ暗に。雨が降り始めて、遠くの水平線にイカ採り船の光がちかちか見えて、カエルの鳴き声が聞こえて、崖の上からどおどおっと滝が落ちている音も聞こえてきて、ずるずると滑るタイヤの音。目で見えるものは本当に少なくて、山と空の稜線、がぼんやり見える。東からびゅうと吹く風だったり、細かい雨の雰囲気だったり、そういうのがバアって迫ってくる。それは全身で知覚しているというよりかは、触覚がいろんな方向に伸びていって、それらが自分の体から離れて、バラバラになっていった世界ってかんじだった。移動しているおれもその中の1部。それをmovingscape (動きの景観)って呼ぶことに。


野口の台湾でのドローイング。70日間のドキュメントブック『台灣環島70days』より抜粋。

鈴木 へえ。


野口 タイヤひっぱりをテーマにした個展でも、その世界をテーマにして作品をつくったんだよ。そして日本に帰ってきてからは、movingscape は、「旅をしていたから起こることなのか」「旅じゃなくても起こすことができるのか」「訓練してそのモードに入れるのか」そういうことを考えるようになった。


坂藤 なるほど。


野口 最初はmovingscapeってなんだろうっていうことを、理屈っぽく言葉にしたりだとか、テキストをたくさん書いたりとかしていたんだけど、結局自分の知ってる言葉で、自分からの視点を固定した状態では全くたどり着けないことがわかった。

だったら他者の活動や思考を通してmovingscapeに迫ってみれないかって考えるようになって、そこから生まれたのがmovingscape連続展なのです。


坂藤 うん。


野口 そうやって進めていくうちに、大事なテーマの1つになりそうだったのが「かろやかさ」みたいな部分だったんですね。坂藤さんをお誘いした理由でもあります。


坂藤 かろやかさ。


野口 うん、かろやかさ。簡単に移動ができてしまう状態にあること。その移動っていうのが、タイヤひっぱり的な旅じゃなくても、気楽に表現の場所っていうのを変えていけたり

坂藤さんの場合は、ダンス、劇、企画をつくる、ラジオをやる?ときの態度とか。



◯かろやか?カジュアル?


鈴木 ああ、坂藤のそういうところにかろやかさを感じるってことか。


野口 そう。


鈴木 なんかそういうこと言ってたよね、そういえば。一昨年くらいかな。


坂藤 一昨年?


鈴木 横須賀に住んでたころ、あんまり深く考えないようにするって。


坂藤 あ~、えっとね。

なんだっけ、あのカタカナ。


鈴木 カジュアル?


坂藤 カジュアル!


鈴木 カジュアルって言ってて、あ、そうなんだって思った。一年の抱負みたいなタイミングでね。


坂藤 私の友達に、用がなくても電話かける子がいてね。なんか私はそれがぜんぜんできなかったの。今も別に得意ではないけれど。なんもなくても電話かけたり、会いたい人に「会いたいです」って連絡したり、「いいと思ってます」みたいなこと言ったり、そういうのが良いなって思って。

コミュニケーションをカジュアルにするってのを目標にしたことがある。


野口 ふーん、それが2年前の出来事?


鈴木 横須賀にいたときだから、そうだとおもう。


坂藤 たしかに、横須賀に住んだこととかも結構カジュアルだったね。


鈴木 「となりあう身」とかコンスタントにやってた頃だ。


野口 紙芝居の人とか、音楽家だったり、坂藤さん自身も踊りを発表したりとか、って企画だったよね。


坂藤 そう。


野口 カジュアルに「一緒にやりましょう」っていうんだ。


坂藤 そうだね。メールで誘うときはちょっと慎重にはなるけど。


野口 ふーん。結局カジュアルとかろやかさってなにが違うんだろう。


鈴木 ほとんど意味は変わらないと思う、ちょっとアホっぽく言おうとしてた感じじゃない?


坂藤 えー、結構真剣にいってたのにな。


鈴木 いや、なんかわざと軽く言ってるのかなって思ってた。「かろやかさ」のほうが真面目そうな響きがある。


野口 たしかに。


坂藤 カジュアル、、。


(明るいギターの音)



『あかるさ』


野口 坂藤さんの踊りの中にも軽やかさってのはあるね。

それにもカジュアルって言葉を使えるの?


鈴木 、、使えなさそう。


野口 その違いってなんだろう。


鈴木 あ、でも「貝と皿」って作品やってたじゃん。あれは、、



桑原史香・坂藤加菜『こんなに知らない貝と皿』(2018)メインビジュアル

野口 ああ、「こんなに知らない貝と皿」。坂藤さんが最近つくった舞台の作品だったよね。


坂藤 そう。


鈴木 あれはすっごくカジュアルに感じた。


野口 なんかあかるい雰囲気だったよね。写真を少しみたけど。


坂藤 あかるい雰囲気だったよね。


鈴木 あかるい雰囲気だった。

おれが今まで関わった舞台の中で楽しい時間が一番多かった。苦しい時がなかった。座組みもよかったし。


坂藤 でも、どうしよ、どうしよ、みたいな時間はあったよ。


鈴木 でもそれは方向性とか作家性の悩みとかじゃなくて、この糸ひっぱると照明と絡まっちゃうな、どうしよ、、みたいな時間。


野口 あはは。


坂藤 謎解きみたいなね。


鈴木 それって単純じゃん、悩みとしては。解決させればいい話だから。


坂藤 「輪っかをいっぱいつけてみよう」とかで解決させちゃったんだよね。


鈴木 普通の制作現場だと、「解決することがそもそも正しいのか」とか「この人ほんとにこの役割でいいの」とか。そういう悩みがあったりするじゃん。そういうことがあんまりなかった。


坂藤 そうだね。


野口 なるほど。


鈴木 あとは、やってることもすごくあかるく感じた。希望がある。


野口 よいね、「あかるさ」「カジュアル」


鈴木 あの中の場面で、「こんなに知らない〇〇と〇〇」ってお客さんが書くところがあったじゃん。


野口 こんなに知らない芸術と探検!みたいな?


坂藤 そう、〇〇に当てはまる言葉をお客さん全員に、一枚の紙に書いてもらって、それを集めるのね。それを全部ならべて、わたしとふみかさんが全部言ってく、ってのをやったの。


野口 ステージに並べるのか。


坂藤 それを読み上げて、ダンスするの。


野口 たのしい~


鈴木 こんなに知らない、


坂藤 なにと、なにと、なにと、なにと、


鈴木 なにと、なにと、なにと、って言いながら、そのテンポに合わせてふみかさんと踊るんだよね。交互に。(ギターを弾きだす)


坂藤 ワルツだ~


鈴木 そう、これ3拍子のワルツ。



◯処世術、、?


野口 坂藤さんはテンションが変わらないというか。動じないよね。


鈴木 ラジオ録る前、「ああ、緊張するね」って俺とたっぺいが言ってたけど、かなちゃんは「別に」って感じだったじゃん。


野口 うらやましい


鈴木 でも不動産屋いくときはすっごく緊張してたね。入れなくなっちゃってた。


坂藤 動悸が激しくなって。


野口 movingscape展に向けてステートメントを書いたんですけど、テラトテラから「選択の不自由に」に応答してって言われていたのもあって、わりと政治的なものになっちゃって、そこで1つ出てきた言葉が「私の処世術」ってものだったんですよ。


鈴木 生き抜くための術って意味でしょ。


坂藤 ああ、あった気がする。


野口 坂藤さんの踊り、昔から少しずつみてきたけれど、あかるい顔をしている印象はあんまりないかも。真顔っていうか、どちらかといえば暗い顔?感情を読み取らせない顔。なんだけど、それとは別に「あかるさ」「カジュアルさ」って言葉を意識的に使っていたこともあったという話を聞けました。いろんな方法で発表を行うけれど、深刻にならないって風にも言えるのかな?

それを「坂藤さんの処世術」として坂藤さんの魅力について、行動選択の原理となる価値判断について、観察していけないかなって風に思いましたよ。


坂藤 処世術、、?

うーん、ありがとうございます。


(素敵なギターの音)

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