たくみちゃん

statement

海を越えて

　乱立する筒の一つ一つに人間が入っている。そのイメージからなぜか、群島を連想した。しかもエーゲ海の。ということは、オデュッセイアだ。オデュッセウスが数多の苦難を乗り越えて帰還する船旅の物語。海を越えるということは今は飛行機を使って簡単だ。海の広さも、深さも、感じられなくなってはいないか。

　今、中国の北海というところでこの文章を書いている。スマホで文章を綴るという慣れない作業、つまり親指でこれは綴られている。中国で参加しているフェスティバルを終えると、すぐに飛行機に乗って海を越え、乱立する筒に分け入ってゆく。全てを親指一本でインスタントに解決することができる。それはロンサムなことかも。

　乱立する筒の組み込まれているフェスティバルは「選択の不自由」というタイトルになっている。時代の雰囲気を映してこのタイトルになったのだろう。でも、ある一つの「不自由な」出来事を、「自由」であるとも（なかばやせ我慢のように）言いのけることはできるのではないか。開かれる芸術祭に「選択の不自由」というタイトルがついちゃうこの時代の雰囲気から、僕は自由を勝ちとりたい。

　それは気休めかもしれないが、ハンサムなことであるだろう。